【Report】Service Design Network Japan Conference 2016(前編)

2016年1月23日、Service Design Japan Conference 2016が開催された。 3回目となる今回は「日本でのサービスデザインの進化−Evolution of Service Design in Japan−」というテーマのもと、米Adaptive Path社のJamin Hegeman氏の講演をはじめ、グローバルに議論されているサービスデザインのトピック、また国内各社のサービスデザインの事例共有やパネルディスカッションなど、充実した内容のプログラムとなった。 本レポートにて、各プログラムの内容をダイジェストでご紹介する。

講演の動画も公開しています。併せてご覧ください。




【基調講演/デザイナーとノン・デザイナーの境界に橋をかける】                    Jamin Hegeman(Adaptive Path)

本イベントの基調講演として、サービスデザイン・ネットワークの役員も務める米Adaptive Path社のHegeman氏に登壇いただいた。同社は、米大手金融会社Capital Oneによって近年買収された代表的なサービスデザインエージェンシーであり、Hegeman氏はそこでサービスデザインの活動を主導する立場にある。自身の現場での経験から、デザイナーとノン・デザイナーが協働し、共創するためには何が必要か、そのあり方について提言した。


多領域が関わるプロジェクトにおいて求められること

現在のAdaptive Path社はすべてCapital Oneに関する仕事であり、それ故に多くの人と協働する機会が増え、JOURNEYECOSYSTEMBLUEPRINT…といったサービスデザインに関連する用語が社内に浸透し始めたとのこと。つまりそれは、デザイナーとデザイナー以外の人(ノン・デザイナー)もそういったツールを使う機会が増えてきたということを示している。実際サービス実現のためには、そういったスタッフを含め多くの人の共通の理解が必要であり、Hegeman氏は、サービスデザインはサービスインタラクションを通じて顧客体験とスタッフ・事業側での体験全体を対象とすることを説明した上で、顧客-スタッフ-ビジネス(事業主)の三方の共感を得ることが必要と解説した。そのような背景では、もはや我々はデザイナーとノン・デザイナーは協働せざるを得ない状況にあると言う。そこでHegeman氏は、デザイナーとノン・デザイナー間のそれぞれの状況や立場によるギャップに着目した上でそれらを大・中・小の3段階に分け、それぞれを橋渡しをするための観点について論じた。


デザイナーとノン・デザイナー間の小さなギャップに必要なのは共通言語化によるプロセスの共有

ギャップが小さい場合においては「プロセス」「ツール」「共通言語」という観点が重要であると言う。Hegeman氏は、実際の事例として神経外科診療所のサービスデザインのプロジェクトについて紹介した。その事例では、デザイナー以外に看護士やエンジニア、副社長といった多数の役職の方が参加し、さらに実際の患者も巻き込んでソリューション開発を行ったとのことであった。そこでは、ボードゲームのようなものを使ってゲーム性を取り入れたり、多数の参加者で作成したジャーニーマップを囲んでWSを行うなど、協働するためのツールや環境を整備することで、立場の違う参加者がプロセスを共有しやすい仕組みを作ったことをHegeman氏は解説した。


中程度のギャップがある場合には、明確な役割分担による長期のコミュニケーション支援が必要

続いて、デザイナーとノン・デザイナーの間に中程度のギャップがある場合について、Hegeman氏はプロセスの可視化が重要であると論じた。そのためにはプロジェクトでの各プロセスにおけるそれぞれの役割を明確に定義する必要がある。そしてそれは、長期的なコミュニケーションの支援につながると言える。またこれまでの実際の手法として、協働する際かつてはデザイナーがノン・デザイナーであるステークホルダー側に参加していたが、その場合与えうるインパクトは短期的であり、デザイナーが去れば結局はステークホルダー側は元の慣れたやり方に戻ってしまっていた。その場合は、そうではなくてステークホルダー側からデザイナー側に参加してもらう方が有効であるとHegeman氏は述べた。


大きなギャップがある場合には、サービスの質を担保する組織構造が必要

最後に、デザイナーとノン・デザイナー間に大きなギャップがある場合に必要な観点について、Hegeman氏は解説した。まず良く言われることとして、ビジネスの現場においては「企業はリスを追いかけるのが好き」だという。これは、プロジェクト遂行中に目の前に新しいことが現れると、皆がそちらに気をとられてしまう、ということを示唆している。特に多領域に渡るサービスデザインにおいては、こういったことにならぬよう各専門家の意識合わせが必要である。またHegeman氏は、現状ではサービス体験に関する権限や責任の所在が不明確で、結局は社長に行きがちであることに着目した。


サービスエクスペリエンスオフィサー(SXO)の配置

ここでHegeman氏は、先の問題から、サービス体験全体を統括してサービスの質を担保する役割として、サービスエクスペリエンスオフィサー(SXO)の配置を提案した。同時に、サービスデザイナーが束ねるサービスエクスペリエンス部門の設置も提言した。今後はデザイナーとノン・デザイナーのハイブリッドチームとしてもっと密接な関係を作っていくことが必要であるという。そのために最も重要なのは、サービスデザインが組織の機能の一部となるような組織自体の変革であると語り、Hegeman氏は講演を締めくくった。


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セッション1インダストリアル・インターネットKarine RauGE Energy

私は3年前にGEに入社しましたが、以前はコンサルタントをしていました。1年半前にGE Energyに配属され、重要な意志決定の場に参加しています。

みなさんは「IoT」と聞いてなにを思い浮かべるでしょうか。Nestなどの空調機器、ヘルスケア、セキュリティーシステムなどでしょうか。実は風力発電などのエネルギーシステムや、省燃費のジェットエンジン、ガスタービンも「IoT」に含まれます。これら「インダストリアル・インターネット」とも呼ばれています。インターネット技術の産業部門への影響力は大変大きく、2020年までに2兆ドルのビジネス機会が生まれると言われています。それはコンシューマー向けよりインダストリアル向けの方が、インターネットに繋がるアセットの数が多いという意味で規模が大きいからです。飛行機から、はたまたパイプラインといったものに至るまで、インテリジェント化やオンライン化を行います。これらは膨大なデータを生み出し続ける「インテリジェント・マシーン」と化し、そのデータをソフトウェアで処理してアナリスティックを掛けます。その分析結果はユーザーにとって大変有用で、いままで「人間中心」ではなかったこれらのプロダクトが人間中心になり得るのです。その為には「エンドユーザーを如何にして巻き込むか」が重要になります。さらに産業用機械のIoT化は「無駄を排除する」という意味でもとても有効です。例えば、航空機の燃費を1%改善できれば15年間で300億ドルの節約ができ、石油ガス探索開発で資本を1%削減できれば15年間で900億ドルのコストが圧縮できると言われています。しかし、これらは大変難しい仕事となります。なぜなら、プロジェクトにはまだ古いしきたりや昔からある機械が残っていたり、顧客の考えもまた古い場合があるからです。

現在存在するデータの90%は過去2年間に生み出されたものと言われています。これらをどう活用していくかが鍵になります。エネルギー分野の話をすると、2万マイルのパイプラインの内およそ半分が1970年までに作られた古い物です。これらの古いパイプラインがIoT化によって安全になるのです。IoT化されたパイプラインからは3万マイルごとに17TBのデータがはき出されます。これはアメリカの議会図書館の蔵書量より多い膨大なデータ量です。よって、そのデータ量の多さからセキュリティやパフォーマンスの問題も発生します。またエンドユーザーの視点を手に入れるためには現場に行くことが必要で、そのための訓練もまた必要となる事があります。実際に私はヘリに乗るための膨大な訓練を受けたりしました。未知な物に触れると人間は怖がります。「インダストリアル・インターネット」は今まで無かったものであり、まさにその対象となり得てしまうのです。

コ・クリエーションとその効果

「インダストリアル・インターネット」のような未知な物を浸透させる有効な手段としてコ・クリエーションがあります。コ・クリエーションとは多様なステークホルダーを集めて問題解決をしていく事であり、幹部と現場やエンドユーザーが離れてしまっては意味がありません。さらに、コ・クリエーションは色々なものが不明瞭な時に行うほど有効に力を発揮します。その効果・影響は、正しい問題認識、ソリューションの明確化、信頼の確立、ステークホルダーとの遭遇、セールスのスピードアップ(68週間)、顧客が自ら幹部にプレゼン可能なこと、早く現実的なプロトタイプの作成など非常に多岐に及びます。とはいえ、実際にはデザイナーが上手くリーダーシップを取る必要が出てきます。それは企業の既存事実に抗うのではなく、戦略的なパートナーシップを築くことであり、組織がUXを理解することです。

コ・クリエーションはステークホルダーがデザイナーになれるようにすることであり、言語をコントロールする人が議論をコントロールするために共通のソリューションが重要になってきます。それは多くの組織がアジャイルなエンジニアリングを理解し、コ・クリエーションを理解することであり、フェデレイテッド・ファシリテーション(内部でも外部でもバランス良くコ・クリエーションを行うこと)に繋がります。結果、それぞれの言語や縦割りの組織に抗わずに、物事を実現できる関係を構築することができるようになります。また、今までデザインに関わってこなかった「新人」を参加させることで感情移入が可能となり、今までデザインに使ってこなかったツールも使って一緒に取り込むことで、発見(より良い「コ・クリエーション」)、デザイン(ベストな「コ・クリエーション」)、実施、評価へと繋がっていきます。

  • コ・クリエーションをツールとして加える
  • コ・クリエーションを早い段階で行う
  • 現場と親友になる
  • 組織の中に種をまく
以上は決して新しいプロセスではありませんが、産業界に適応することは新しい取り組みです。

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【基調講演/24のコミットメント:類稀なサービス・カンパニーを駆動する意思決定】Alisan AtvurNovo Nordic Senior UX designer)

続いて、Novo NordicAlisan Atvur氏より、様々なカンファレンスやクライアントワークを通じて見えてきたイノベーションを起こす企業の様々な“コミットメント”の事例をご紹介いただいた。

「背景」

昨年、ボストン・コンサルティングが発表した「最もイノベーティブな50社」のうち21社にかかわっていた(友人、クライアント等)。しかし、イノベーションを起こせるサービス、企業とそうでないものにどのような違いや要素があるのか10年間悩んでいた。その間、様々な国で仕事をしたり、様々な会議に出席している中で話題になるようなサービスは特定のパターンがあることに気づいた。通常、事業を行っていく中で次の3つのサイクルが起こり得る。

1.危機 ・顧客が不満に想う・株価が下がる・競合がシェアをとってしまう    2.反応押されたので押し戻す、つまりレスポンスするということである。    3.結果反応した結果である。危機に対して“反応”するのではなく“コミット”するということが重要な事だと気づいた。コミットメントというのは献身的にある活動に対して“やる”と決断すること。その“コミット”をした企業が「最もイノベーティブな50社」だということがわかりました。コミットには大きく4つのタイプがあり、それを細分化したモノが24のコミットメントという事になります。1.R&D 2.マーケティング、ブランディング 3.HR(人材関連) 4.チーム管理

「事例紹介」

リアクションだけでなくコミットメントした例をいくつか紹介していただいた。 イノベーションセンターをつくるというコミットメント 未来の病院のエクスペリエンスを描くということを目的に、模擬病院という形を作り、そこで様々なアイデア発想、研究活動を行っている。 デジタルなコミット デジタルファシリテーションという、様々な問題の要素を同時多発的に様々な人々が自分の時間の半分を割いて分析している。 プロピレンのwebサイトビジョンビデオ ビジョンビデオには様々な効果がある。

  • このサービスは何を未来に描きたいのかを視覚化する
  • みんなの方向性を一致させる
  • 他の企業にも刺激を与え業界全体に影響を与えることができる  
デザインの言語を作る、揃える マテリアルデザインのような例がある。 ファシリテーションミーティング ミーティングにファシリテーターをいれて会議を生産的にする。 チーフピープルオフィサー チームメンバーのニーズを吸収する人を組織に配置する。仕事はそのひとの人生も仕事に影響してくるので、そのひとの人生と仕事を理解し結びつけることで、より良いクリエイティブに繋がるという。最後に一言。人間について、ユーザについて、ステークホルダーについて様々な事を考えたいが私はできない。しかし、みんなで力を合わせればできるとAtvur氏は言う。24のコミットをすべてやらなくても、いくつかやれば変わっていく。組織に完璧は成り得ない、どの部分を解決したいかを理解して効果的にコミットメントしていくことが重要であると締めくくった。

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【講演/商うを、自由に ~Airレジ開発ストーリー~】大宮英紀(株式会社リクルートライフスタイル)


2013年にサービス提供を開始した無料のPOSレジアプリであるAirレジの開発を担当した株式会社リクルートライフスタイルの大宮英紀氏より、本サービスをどのような思いを持って開発してきたのか、その開発ストーリーについてお話しいただいた。



長期的に世に影響を与えるためには、組織・人材・カルチャー・生態系をもデザインしていかなければならない


大宮氏は最初に、「デザインする」とは「何か新しい物・体験・仕組みを、意思を持って作り出す全ての活動」と定義した上で、「サービスデザインをする」とは「何か新しい物・体験・仕組みを、達成するサービスを、意思を持って作り出す全ての活動」であると述べた。そしてこの開発のそもそもの出発点は、「どうしたら可能な限り大きな影響を最も長い期間与えられるようになるか」を考えた、ということであった。そういったとき、プロダクト・体験・ビジネスモデル・エコシステム(生態系)をパッケージとして構築することだけを考えるのではなく、組織・人材・カルチャー・評価制度についてもデザインの対象として考えていかなければ、長期的に影響をもたらすことはできないと大宮氏は考えた。



未来の当たり前を思い描くことからのスタート


Airレジ開発のスタートは「未来では当たり前となっているであろう状況をイメージすること」であったという。自分が未来にタイムスリップしたつもりで、そこにはどんなモノやサービスが提供されているのかを具体的に思い描く。そこから現在を見ることで、未来のあるべき姿と現在とのギャップがクリアに見える、と大宮氏は解説した。「どうやって未来における当たり前を思い描くのか」と来場者からのちに質問が上がったが、大宮氏によれば、現在研究されている最新のテクノロジーの動向を常日頃チェックするだけでなく、そういった領域に明るい人とのネットワークを築いておき、ディスカッションできる仲間を持っておくことが重要であるとのこと。

 

そういった観点からスタートした中で、大宮氏は世の中の関心として「自由なアクセス」と「データ化」に着目した。つまり、必要なモノを所有することよりも、どこでも必要なときにアクセス・利用できることに価値が見出されてきていること、そして身の回りのものすべてを量子化=ビット化、すなわちデータとして扱うことで、様々な面での連携が可能になってきた、という点である。これは同時にセキュリティについても考えていかなければならなくなることを示している、と大宮氏は解説した。



アイデア・構想だけでなく、自分自身の実行力・実現力を俯瞰的に捉える


こういった世の中の動向を見据えた上で、どういった価値を世の中に提供できるかを大宮氏は考え、次の図を使って説明した。


「ビジネス的に価値のあるもの・技術的に実現可能なもの・ユーザーにとって価値のあるもの」というだけアイデアや構想といった側面だけでなく、「情熱を持って取り組めるもの・自社が世界一になれる部分・経済的原動力」という自分自身の事業としてみたときの実行力・実現力を俯瞰した視点で捉えることで、持つべき視座が定まったようである。



ユーザーへの共感と理解


次のステップとしては「自分で体験、ユーザーを注意深く観察、ユーザーに直接聞く」ということをベースに調査を行い、ユーザーについて理解を深め多くの人が共感できるポイントを探った。具体的には、店舗経営に関して、店員がレジ閉めのため遅くまで帰れないこと、そして同時に人手が不足しておりなかなか自由に休めないこと、一方で経営判断につながるような状況をつかめておらず、柔軟に経営ができていないことに大宮氏は着目した。

 

具体的な問題定義としては「お店をとり巻くたくさんの煩わしさと、変わらない店舗環境」とし、取り組むべきミッションとして「お店をとり巻く煩わしさを減らし、自分らしいお店作りができるようにする」と設定したことを大宮氏は説明した。

 

レジスターに代表される会計サービスプロダクトの業界におけるポジションとしては、単機能の通常のレジスターの他、ネットに繋がるやや高額なレジスター、高機能だが非常に高価なPOSなどを考慮し、狙うべきポジションとしては、簡単でスマートに、そして誰にでも手が届くPOSレジを再開発することを選択するに至った。



Airレジによって、より少ない投資で多くのことができるようになる


ここでの提供価値としては、「より少ない投資で多くのことができるようになること(早く帰れる、採用しやすくなる・長期勤務しやすくなる、休みやすくなる、経営しやすくなる)」が挙げられる。Airレジによって、バックヤード業務は減らしつつ、空いた時間やお金をお店の本業である接客やサービスに費やすことができるようになることを大宮氏は解説した。


また、このAirレジのリリース後に関しては、わずか2年でアカウント数は21万を超えている状況。しかし、単に「21万ユーザーがいる」という捉え方ではなく、「ユーザーごとに21万のパターンがある」という捉え方によって様々な文脈を考慮し、外部連携を積極的に行っている。QRコード決済やクラウド会計、他にもグルメ予約など、様々なサービスとの連携を可能にすることにより、本サービスを中心とした新たな生態系の形成をもたらす。

 

すなわちそれは、オープンにサービスとつながることで更に提供価値を高め合うという、シナジーを生む環境の構築に繋がることを示唆するものであった。

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【パネルディスカッション1

サービスデザインを日本の企業で考えるときの課題・着眼点

 

(司会)長谷川 敦士(株式会社コンセント)

(パネリスト)

Jamin HegemanAdaptive Path

Karine RauGE Energy

Alisan AtvurNovo Nordic

大宮 英紀(株式会社リクルートライフスタイル)


株式会社コンセントの長谷川氏を司会に、「サービスデザインを日本の企業で考えるときの課題・着眼点」テーマとしてパネルディスカッションが行われた。まずは株式会社リクルートライフスタイルの大宮氏が話題に取りあげたサービスである「Airレジ」について、海外の3名から意見を伺った。



エコシステムを予め埋め込む


まず、Jamin氏はAirレジ」について、システムを理解し、ジャーニーを理解し、プロトタイプを作っていくというプロセスは全く新しいサービスを作るという意味でよく使われる方法であるとした上で、デザインをする上では将来のサービスを想像することが重要だと語った。

日本企業がサービスデザインを考える場合はAirレジの様にデザインをシームレスにしていく、最初からエコシステムを理解していくという方向がある、とのこと。

Airレジは全てを最初から作ろうとせず、小さくはじめている点が素晴らしく、小さいところからフィードバックを重ねてエコシステムを拡大し複雑化していくという点で評価できるとのこと。


それに対して大宮氏は小さくはじめるがアーキテクチャーとしてエコシステムを予めそこに埋め込むことが重要で今後のトレンドとなると答えた。

 

さらに長谷川氏からの、エコシステムをあらかじめ想定する場合にどの規模として想定するか、という問いに対して大宮氏は数ヶ月での顧客数を設定して目標とした答え、POSシステムの置き換え以外にも外部のソリューションと連携することも想定するなど、あらゆるパートナーシップを前提としていたと答えた。



パッションの維持


Karine氏からはパッションがエクスペリエンスに重要という認識で正しいか、どうやってパートナーシップを広げていったか、との問いが出た。


それに対し大宮氏はパッションがエクスペリエンスに重要とした上で、最初は5人のチームからスタートしたこと、自らがプロジェクトオーナーとしてプロジェクトに入り自ら重要なファクターを主導、決定していったと答えた。

一つより複数のサービスを使う方がロイヤリティが高くなるので、複数のソリューションを望むユーザーに対してはそのようなソリューションのオーナーを提供することが、顧客にとって大きな価値となるのだそうだ。その場合、複数のソリューションの対象が近しいことが重要となり、また様々なサービスを自ら提供するよりも、アライアンスを組んだ方が良いとのこと。

プロジェクト規模が大きくなった場合のパッションの維持については課題を感じており、人が増えるとチーム内での暗黙知共有できなくなるとのこと。ミッションやビジョンに立ち戻る、現場に行って貰うなど、メゾットを整備しないと組織としては厳しいかもしれないとも述べた。


それには長谷川氏も人が増えるとサービスは見えるが見えないパッションが共有されにくい、そのためにもメゾットの明文化が重要、と同意し大宮氏も他チームでもメゾットを共有できるので意義深い、と加えた。

 

その点についてJamin氏もスタートアップと既存サービスに大きな違いがあるとした上で、スタートアップ(4~5人)だと出来る事も、チームが大きくなるとできなくなることがあると同調した。この問題についてはアメリカでも良く直面する課題であり、企業が成長するとスタートアップにはなれないのだそうだ。

 

そこに長谷川氏から、規模が大きくなるとパッションの共有ができず、メゾットの共有しかできなくなる、との指摘が入るとJamin氏は、初期はパッションがあるが後で来る人は同じ気持ちじゃない、とした上でサービスデザインで共有できるのではとの見解を示した。

 

それについてKarine氏は、パッションを動かす物が人によって違うとし、誰もが同じ情熱を持っているわけじゃないと語った。 



チームの独立


Alisan氏は笑顔になることが興味深いとした上で、多くの国で同じような課題に直面しており、代替案の提案がサービスデザインの面白いところだと述べた。どんな場合でも完璧に順調なところはなく常にチェレンジがあり、細かい物は会社の規模や歴史で違うが、全部変えて良いということはあまり無いとのこと。

 

それについては大宮氏も、自らのアイデンティティが自分にも会社にもあるとし、新しいものを生み出すとき小さなチームで独立してやるとの意見を述べた。

 

Karine氏もチームの独立はよくやるし大事だが大きな組織だと時間が掛かるとした上で、どうやってキーパーソンをチームに連れてこれるかが重要と加えた。NOと言われる前にどれだけ早くできるかなど、大きな組織の中でもスタートアップは利用できるとのこと。

 

独立についてAlisan氏は、異なる責任が発生しプッシュバックへの対抗など関係の問題となってくるとした上で、上手くいくときもいかないときもあると経験を述べた。全ては人間同士の関係性、トレードオフがあるとのこと。



ステークホルダーの巻き込み、合意形成


ここで大宮氏からは、物を作るハードルが下がってきてサービスを作ることも重要だが、サービスを生み出すときに大企業の中で上部のステークホルダーを巻き込むのか、特に製造業のマネジメントと合意形成はどのように行えばいいのか、との質問が出た。


それに対しKarine氏からは、多くの場合はどこから関係をはじめるかだが、まずは小さいところからはじめる、とのこと。1人のマネージャーを味方に付け、その人がきっかけとなりショーケースとすることが必要で、そこで価値提案をする、という意見が出た。

 

一方Jamin氏からは、関係構築などいくつかのやり方はあるが、まずは飲みにケーションなど関係を作ってしまうのも大切という意見が出た。相手がやりたいことを我々ができるというアピール、相手のキャリアに自らがどこまで寄与できるかなど、相手が出世すれば成功との見方を示した。

 

さらにAlisan氏は、「他の人が見てみたいビジョン」、「それによって触手が動くか」、「それによって自らの欲求が満たせるか」など、何に対してハングリー精神をもっているのか、何に対して関心を持っているのかでそれを見極めると述べた。

   


日本におけるサービスデザイン


ここからは会場からの質問となり、社内でサービスデザインの価値をどう伝えたら良いのか、といった問いが上がった。0から1をどうやって踏み出したらいいか、を考えている企業が多い中、100にするための議論とは乖離が見られる。遅れている日本企業が遅れを取り戻すためにはどうしたらいいか、追いかけるだけで無く、追いつくためにはどうしたらいいか、という内容だ。


それに対しJamin氏は、そんなに遅れていると思わないことが寛容と念を押した上で、サービスデザインは新しい取り組みなので今から初めても遅れていることはない、むしろ日本の配慮、こだわり、アニメなどのサービス指向という文化は強みであると返した。

 

その点についてはKarine氏も同感とのことで、日本の文化の中に良い傾向があり、自らのシステムになれているが「良い経験」に気がつくことが大切とした上で、小さいところからはじめることで世界に先んじることが出来ると答えた。

 

Alisan氏からも、フィードバック(アンケート)文化が日本ほど高い国はない、その文化は日本とって大切でありより強化すべきという答えが返った。

 

長谷川氏からは、011100は二項対立ではないとした上で、シードも無い状態で探しながらピボットしつつ試行錯誤、組織の中で1100の文化があれば、種を実現化する強みとなる、という意見が出た。

 

大宮氏も、Airレジが海外展開しているとした上で、2000年も続いた日本文化は良い文化であり日本語は海外からも興味の対象となっている事実を述べた上で、独自の文化を活かしていきたいと述べた。

 

最後に長谷川氏から、エコシステムの思想で始め、パッションが需要になるが組織の変化にはサービスデザインツールで対応し、大きな組織小さな組織の違いを認識しつつ、そのあたりは引き続き日本のサービスデザインコミュニティで議論しながら進めていく、とのまとめとなった。

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